「終わりの始まり」―― 音楽業界の2007年と2008年

http://d.hatena.ne.jp/rmxtori/20071230/p1

では、なぜ、売れなくなったか?

もともと志の高くない音楽のユーザーとは、純粋な意味での音楽ファンではない。

彼らにとっては音楽は、所詮ツールであり、媒介だった。

10年前、売れていたCDとはドラマやCMのタイアップ曲だったり、カラオケで歌いやすい曲だったりした(ヒット曲がカラオケで歌われるのではなく、カラオケで歌われる曲がヒットした)。

当時、テレビはまだエンターテイメントの中心にそびえ立っていて、その中でもドラマは若者であれば「誰もが見るもの」だった。

学校や職場の友達とドラマの話をし、カラオケに遊びに行く。そんな場面のひとつのピースとして音楽があった。音楽はコミュニケーションのネタであり、関係性を築くタネだった。

だからこそ、「みんなが聞くからみんなが聞く」というインフレーションを起こし、ミリオン・ヒットが量産されていった。それが10年前だ。

私の実感として、確かに10年前は「みんなが聴くから聞く」「カラオケのために覚える」というようなコミュニケーションツールとして音楽を聴いていた。
でも、そのあと数年後「カラオケ疲れ」のような現象があったように記憶している。最新曲をカラオケで歌って「もてる」「人気者になる」という事に疲れてしまった、と。新曲が次から次へとでてきて追いつけなくなってしまったのだ。

カラオケは相変わらずコミュニケーションの場として堅調だが、カラオケで歌うためだけならわざわざCDは買わない。レンタルや友達に借りる、あるいは違法ダウンロードしたものをCDRにコピーできればそれで十分だ。

感覚でしかないが、カラオケも堅調とはいいがたい。
かつての「カラオケ疲れ」という時代から考えると、ヒット曲が減ったというマイナス面が幸いしてか、覚える必要のある曲が減った。そして、景気が悪くなったせいか、「イケイケ」から「まったり」「のんびり」「癒し」に時代が移っていき、リバイバルブームが起きる。昔覚えた曲がそのまま使えるようになった。昔の曲は結構みんな覚えているし、歌い方も比較的簡単。老いも若きも共通のプラットフォームが整った。つまり、コミュニケーションとしてのカラオケは何とか生き延びたように見える。
それはまるで…

ゲーム業界はWiiやDSを生み出して、ゲーム・ファンではない一般層を取り込んだ。

PS3が不振でWiiやDSが好調なのと構図が似ているように見える。
ライトユーザーを取り込んだWiiやDSは共通のプラットフォームになり、同じゲーム遊び、通信機能でコミュニケーションも出来るようになった。

音楽にしか興味がなかった人間が、それぞれどうやって第二の人生を生きるかを考える。

音楽業界にとって、2008年はそんな年になるような気がする。

2008年には解決しないかもしれないけど、ドラえもんの道具「ムードもりあげ楽団」が現実のものになったら音楽の新しい時代を拓くような気がする。0.1秒のSE、1秒のアタック、5秒のジングルも音楽と捕らえればまだまだ面白い世界が出そうだが…