戦艦"テレビ"大和に3Dの世界は航行できない

3Dテレビ全然売れない!主要4社参戦も「期待外れ」

http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20100729/dms1007291615007-n2.htm
 3D(3次元)立体映像テレビの国内主要4社の製品が出そろった。3Dビデオカメラなど周辺機器の投入も相次いでいる。ただ、薄型テレビの販売台数全体に占める割合はわずか1%程度にとどまり、今年を「3D普及元年」とするかけ声とは裏腹に、今のところは期待外れとなっている。

メーカーが本気で期待しているとはとても思えないんだけどなぁ…

地デジ普及率、80%突破 エコポイント貢献、政府目標上回る

http://www.sankeibiz.jp/business/news/100525/bsb1005251037010-n1.htm
総務省が25日発表した今年3月時点での地上デジタルテレビ放送の世帯普及率(速報値)は83・8%となり、初めて8割を突破した。

地デジテレビの世帯普及率が83.8%というのもにわかには信じがたいが、まぁ、信用するとして…
日本の総世帯数をざっと5000万世帯として、その83.8%の世帯に1台、地デジテレビが入ったとすると、日本の家庭に存在する地デジテレビの合計台数は4190万台という事になる。テレビそのものはたしか1億台あるといわれているらしいので、既存のアナログテレビからの置き換えということを考えると、地デジ置き換え率は41.9%ということになる。
つまり、まだ半分も置き換えられていない状況なのだ。
それを考えると、これから普及するかどうかわからない3D機能のために割高になるテレビよりも「とりあえず地デジ対応」という選択肢を選ぶのが今の日本人だろう。

ぶっちゃけメーカー側も「3Dはとりあえず、将来その方向に進みそうだから対応しておくか」ぐらいの気持ちなのではないだろうか。

そんな時思い出すのが10数年ほど前に売られていた「ワイドテレビ」だ。
将来テレビは16:9の横長画面になる!だから、先にブラウン管だけでも対応しておこう!というなんだかよく分からない理屈で、横長画面のテレビ放送もビデオソフトもほとんどない、市場ニーズもほとんどないまま、既存の4:3画面のテレビを駆逐する勢いで強引に市場に投入されたワイドテレビだ。
家電にそれほどこだわりを持たない層にはそれなりに売れたようだが、技術にうるさい層には「現実を映さないテレビ」とか「真実をゆがめるテレビ」などといわれ、「買ってはいけないテレビ」扱いされてしまった。結果、既存の4:3画面のテレビは生き残った。もっとも良く見る映像ソースであろうテレビ放送が4:3画面なのだから当然である。

そして今、地デジが始まり、アナログ放送が終わろうとしている。放送ソースも16:9がメインになった。
あの時ワイドテレビを買った人は、ようやく画面いっぱいに真実を映すテレビ放送が…とは行かなかった。チューナーが対応していないし、それ以前にそろそろ寿命が来る頃だ。結局買い換えることになるだろう。

3Dテレビはそれなりに普及すると私は思っている。
しかし、積極的に3Dが欲しいと思って買う人は極少なくて、かつてのワイドテレビのように、電器屋でテレビを買ったらたまたま3D対応だった、っていう感じで中途半端に増えていき、3D機能は使われないまま中途半端に普及する形になるのではないだろうか。

メーカーはもうそろそろ「高付加価値路線」と決別し、テレビ・携帯・パソコンのマルチスクリーンのうちの1枚を死守することを考えたほうが良いだろう。
消費者はテレビにこれ以上の高機能を望んではいない。
しかし、パソコンや携帯ではテレビの代わりにはなりえないとも思っている。

パソコンのモニターの片隅でテレビを見ながらインターネット、とか、パソコンの画面でDVD視聴、なんていう人は少数だろうし、携帯でワンセグを見たり、ワンセグを録画視聴するのがテレビより主力になっているとは思いがたい。
多くの人は、テレビはテレビ、携帯は携帯、パソコンはパソコン、それぞれのモニターをつかって見ている筈だ。

テレビのような大規模なインフラの整備が必要で、さらに端末装置をほぼすべてハードでまかなうという仕組みは、戦艦大和のようだ。攻撃力は強力だけど機動力に欠け、しかも水面というほぼ2次元の世界しか移動できない。戦艦でこれからの時代の変化についていくのは難しいのだ。
これからはソフトでこまめにサービスの質を向上していくソフトの時代。機動力の高い、空という3次元の空間を自由に行き来できる戦闘機の時代なのだ。

地デジの技術的なものは少なくとも今後20〜30年は今のまま、大きく変わる事はないだろう。いや、重すぎ故に舵を切っても向きが変わるまで10年単位の時間がかかるのだ。
同じような事は携帯電話とスマートフォンの世界にも現れている。携帯電話のようにハードで時代の変化についていくのは厳しい。スマートフォンのようにソフトで柔軟についていくほうが機動力に優れるのだ。
しかし、テレビは携帯電話の「機種変」のようにはいかないし、価格が高くなった携帯電話は機種変もしにくくなるだろう。

ゆえに、3Dは地デジのそのあと。今のテレビの買い替えサイクルには間に合わない。3Dの放送規格すら固まっていないのだから、そんな状態で3Dテレビを買うのはばくち以外の何者でもない。
3Dはパソコンかゲーム機か、次世代の録画再生メディアなのか、ネット配信なのか、それ以外のなんなのかは分からないが、別のデバイスが実現するのではないだろうか。
そのとき、今の日本の家電メーカーはテレビを作ってはいないかもれない。パソコンのモニターのように、テレビモニターというビジュアル寄りなモニターがテレビの代わりに出てきて安価に供給される時代が来るかもしれない。モニターならB-CASもISDB-Tも関係ないから、世界中共通に売れるし、何より安価に供給されるようになるだろう。