社会の鵜飼になるにはどうすればよいか

就職人気「ベスト10」はすべて金融機関 このままでは日本経済の活力失われる?

http://www.j-cast.com/2013/03/05168012.html?p=all
日本経済新聞社が2014年春卒業予定の全国の大学生を対象に調査した就職希望企業ランキングによると、第1位に日本生命保険、2位が東京海上日動火災保険、3位に第一生命保険と、保険会社が並んだ。それどころか10位まで、すべて金融機関なのだ。

金融機関って、会社が危機になっても国が助けてくれるし、そこまで行かなくても救済合併とかで助かるイメージがあるからねぇ。
ビジネスモデル的にも、外国為替だとか資源の高騰だとか天候不順だとか、ある意味防ぎようのない外敵撹乱要因も少ないように見えるから、安定しているイメージがあるかも。

学生の皆さんは金融機関に入って、いったい何を望んでいるのだろうか、などと思います」と話し、銀行などの「黒子」が目立つ社会では活力が失われると嘆く。

主役より黒子のほうが美味しいって気がついたんだと思うなぁ。

海外勢との競争激化や業績悪化に伴うリストラ報道が相次いだこともあってか、とくにトヨタ自動車やホンダ、ソニーパナソニックといった人気上位の「常連」だった自動車や電機メーカーの凋落ぶりは目を覆いたくなるばかり。日経のランキングでは、トヨタが41位、ソニーが60位、パナソニック77位、ホンダは83位だった。

「海外で活躍したい」という学生が目指した大手商社も、いまは三菱商事が20位、三井物産が29位に登場するのがやっと。ANAグループ(11位)や旅行会社のジェイティービー(19位)もベスト10圏外となった。

おそらく、トヨタソニーでも、車作ったり電気機器を作ったりしない職ならそう簡単にはリストラされないのではないでしょうか。
黒子役。すなわち、総務であるとか人事であるとか、いわゆるバックオフィスの方が美味しいということがわかったのだ。
主役たる製造部門や開発部門が頑張れば、会社としての業績があがり、自分の給料も上がるかもしれない。
逆に、会社の業績が下がれば首を切られるのもまた製造部門や開発部門、ということになりやすいだろう。

商社は海外が危険だとか、メーカーは競争が厳しいとか、食品は営業職がキツイとか

これが案外当たったりする。
つまり、最前線に出て行っても、その労苦が報われることなく、使い捨てられることが人生にとって一番危険だということがわかっているので、ここを何とか避けなければならない。安全に行こうと思えばどうしても消去法になってしまうだろう。
この手の仕事につく人を「ソルジャー」「兵隊」などと呼ばれるのも頷ける話。本物の戦争でも同じだ。兵隊がいくら戦地で頑張ってもせいぜい10人か100人程度の敵を倒す程度だ。上官にだけ許されているミサイル発射の権限の前では、出せる成果に決定的な違いがある。成果主義とは、成果が出にくい仕事をいかに他人に回すか、という争いでもあるのだ。
そういう意味では銀行や保険会社は会社まるごとバックオフィスみたいなものだし、他人のお金で稼ぎを生み出すという意味では自分自身で原資を生み出す必要がないということになる。
もっと広い意味で言えば、1次産業である農林水産業は一部の人を除けば非常に低迷している。儲けが少ないのだ。それより食料は誰かに任せて2次産業である工業で飯を食ったほうがまだマシだ、ということ。しかし、これも今キツくなってきている。と、なればものづくりは誰かに任せて、3次産業たるサービス産業に、ということになるが、サービスを自ら行う人は往々にしてきつくて儲かっていない。チェーン店のオーナーや、有期雇用のアルバイトなどより、それを使う側のチェーン店本部やその社員のほうがいい生活をしているということ。
つまり、「鵜飼いの鵜」になってはいけないということだ。
それに気がついた学生たちが「社会の鵜飼い」である銀行や保険会社に殺到した、ということだろう。
そういう意味で、究極の鵜飼いは公務員だ。「公僕」なんていいながら、なんていうことはない、国民の税金で食べている人たちだ。大量の鵜に支えられた鵜飼いそのものである。一番安定した生活を送っているのは公務員であることに異論がある人は多くはないだろう。
これからも新卒の大学生たちは、鵜飼になるにはどうすればよいか、という行動原理で就職活動をするだろう。