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リスク回避すらさせないのがブラック企業

ワタミユニクロ…短絡的なブラック企業批判が問題を延命?社員や客が加担も

http://biz-journal.jp/2013/11/post_3362.html
 ワタミユニクロ労働環境面では確かにブラックだが、同じレベルのブラック度合の会社ならほかにも多数存在している。なのに、なぜこの2社ばかりが叩かれるのだろうか。

 それは、「経営者が目立つ」「儲かっている」「みんなが叩いてる」など、なんとなく同調しやすい空気があるからではなかろうか。

これはあくまでカウンターとして叩いているのではないだろうか。ワタミユニクロのようなBtoCの企業は一般消費者と直接触れ合うがゆえ、営業時間から扱う商品、価格、客の入り、従業員の接客態度までよく目立つ。ある意味、消費者が経営者目線や株主目線で企業を評価しやすいからだろう。
一方、「経営者が目立つ」のでマスコミ受けがいいし、勢いがある企業ということでマスコミが持て囃す。その裏付けとして「儲かっている」からその経営方法は正しく、経営者も褒められる存在であり、模範とすべき人である、という扱いをされる。
さらに、従業員として働く立場になる人の多さがあげられよう。ワタミユニクロのような企業はアルバイトやパートを多用する。つまり、短期雇用が多いので、必然的に「元従業員」が大量に発生する。すると「元従業員」という内部で働いたことしかわからない経験談などがネット上などで暴露され、マスコミで報じられるような輝かしい企業経営の影の部分、すなわち「ブラック」な部分が明るみになると「商品の魅力や価格に見合った商品で勝ち取った栄光ではなく、多数の従業員の犠牲で勝ち取った栄光」という企業経営の仕組みが見えてくる。
根底に流れているのは「マスコミは都合の悪いことは報道しない」「都合の悪い情報はネットにある」という考え方である。
マスコミは広告主というスポンサーの上に成り立つ商売である以上、スポンサーを叩く報道はしないだろう、と考えるのは自然に事であろう。
一方、ネットは個人の発言が自由であり、個人がお金を払ってネットに情報を発信していることが多いため、言論の自由に収まる範囲であれば基本的には誰を叩いても文句を言われる筋合いはない。もっとも個人が発信する情報の真偽は定かではないのだが、「元従業員」と名乗る人が、いかにも内部の人しか知らないような情報を流せば、その情報は確からしい、真実っぽいという評価を受けることになる。
「金を出した人が口を出す」という意味ではどちらも同じであるが、これが両メディアの特性の違いである。

この両メディアが伝える情報のギャップが「なぜこの2社ばかりが叩かれるのだろうか」に対する答えだ。ワタミユニクロを叩いているのはその通りだが、その影には、ワタミユニクロを持ち上げるマスコミも叩いているのである。高給取りで知られるマスコミが「庶民ヅラ」してワタミユニクロを持ち上げ、ひどい目にあっている従業員の影の部分を報道しないから叩くのである。

もうひとつ考えられるのは「儲かっている」という点である。
ブラック企業だろうがなんだろうが、儲からなければ存続はできない。いつか淘汰されるのだ。それなら叩く必要はない、という判断になるものと思われる。

解雇には厳しく向き合う一方で、異動、転勤、転籍、出向など、会社が社員に対して広範な権限を振るうことについては黙認してきている。産業構造も社会情勢も変化した今、抜本的に見直すタイミングが来たと考えていいだろう。まずは解雇の金銭解決あたりから検討してはいかがだろうか。

企業と従業員のそれぞれが負うリスクと耐えられるリスクを勘案すると「解雇の金銭解決」は企業側に有利すぎるだろう。
今支払っている給料の10年分を払います、というぐらいの金銭なら、企業側が負うリスクとしては十分高いものであり、従業員側にしても負うべきリスクに見合った金銭だろうけど、ここまで気前のいい企業はないだろう。よくても給料の数カ月分を払うだけにとどまることは容易に想像ができる。
従業員が負う最も厳しいリスクが「無収入になること」なのだ。解雇には厳しいけど異動や転勤には緩いというのは、従業員の収入が途絶えないから、嫌々ながらも社会に広く受け入れられているのだ。
この現実を考えてみると金銭解決では企業側に都合が良すぎるだろう。解雇の条件として従業員側が受け入れられるのは収入が途絶えることのない「新しい転職先を確保した上での解雇」だろう。片道切符と言われる転籍や出向にそれほど社会的な批判が集まらないのもこうした理由があるからである。
そもそも、その無収入になることへの備えとして失業保険があるわけで、収入が途絶えることに対するリスクの高さは国レベルで支えなければならない程のものなのだ。1ヶ月や2ヶ月で新しい就職先が決まる人はいいかもしれないが、そう簡単に新しい職場が見つかるような世情ではない。中高年の再就職であれば年単位の時間がかかるだろう。
これを受け入れてなお多くの従業員は賃金が低下する。そのリスクはどうしても従業員が負わざるをえない。

その辺の落とし所を上手いこと突いてきた企業の一つがソニーである。

「転職支援」で使い捨て 正社員切り 成長産業に

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013110702000109.html
 ソニーの広報担当者はキャリアデザイン推進部について「次の職場にスムーズに就いていただくための調整部署。社外転身を希望する社員にはその支援も実施している」と説明する。リストラ研修については「そのような事実はない」と否定した。

 人材サービス会社が、企業から正社員のリストラを受託する「再就職支援業」は、二〇〇八年のリーマン・ショック後拡大。解雇の実情に詳しい東京管理職ユニオン鈴木剛書記長によると「一人辞めさせると数十万円という料金設定で、人材会社の収益の柱になっている」という。

企業からすれば「再就職先を探してリストラ社員にあてがう」なんて手間隙かかることはやっていられない、もっと機動的に人を雇ったりクビにしたい、というのが本音だろう。だから金銭解決にこだわるのだろう。裏を返せば「転職活動」や「再就職」がソニーのような大企業の力を持ってしても如何に大変なものかということを現しているのだ。

http://biz-journal.jp/2013/11/post_3362.html
イヤなら辞めたらいい。職業選択の自由があるのだから。

そうは言っても、これがなかなかできない。
ブラック企業勤務ならなおさらだ。仕事をしながら転職活動をする時間もないだろうし、仕事をやめてから就職活動する金銭的余裕もないだろう。なぜなら、低賃金で長時間働かされるのがブラック企業だからだ。
ブラック企業ブラック企業と呼ばれるのは従業員の立場として最も弱い部分をである「余裕のない収入」「余裕のない時間」を突いて間接的に行動を制限するからなのだ。早い話、企業に歯向かうリソースを従業員に与えないことが企業経営のコツになっているのだ。
従業員に会社の近くに住むよう強制され、呼び出しがあればすぐに駆けつけられるように「間接的に行動を制限する」企業があったり、全従業員に社員寮に住むことを強制し、家族や友人との会話機会を減らすことで「間接的に行動を制限する」企業が叩かれるのもこういう理由があるからなのだ。

確かに「ブラック企業」というバズワードの威力はものすごく、それがあるだけで雑誌の売上やネット記事のPVはある程度上振れするレベルなわけだが、逆に言えば「便利な一方で、本当の問題の所在があいまいになる言葉」だともいえる。

と、いうわけで、本当の問題はブラック企業の存在が「無収入になるリスクに耐えられなくなる」事と「そのリスクを回避するための行動を間接的に制限されてしまう」事にある。