日本企業同士で同じようなものを売るな

上陸したiPadは“Windows 95”以来の黒船か?日本企業がアップルに勝てない本当の理由

http://diamond.jp/articles/-/8287
 かつて、PCのソフトで圧倒的な優位性を誇ってきたマイクロソフトの牙城は崩れ、アップルやグーグル、ノキア、さらにはアマゾンなど、特定の分野で強みを持つ有力企業が、高い成長が期待できる携帯関連のIT分野へと殺到した。

私がバカだからなのかもしれないが、マイクロソフトやアップル、ノキアといった企業を「IT企業」とひとくくりにして並べることに違和感がある。
ノキアを別にすれば、インテルマイクロソフトもグーグルもアマゾンもアメリカの企業だと私は思っている。
そして、これらの企業はまったく似ても似つかぬ企業だ。インテルのOSがあるわけでもなければ、マイクロソフトのCPUがあるわけでもない。
いや、あるのかもしれないが、私は知らないし、大多数の人は知らないだろう。

 一方、わが国のIT分野を見ると、先進のフロントランナーから遅れていることは明らかだ。モノ作りの文化に固執するあまり、技術の組合せやデザインなどのソフトウエアに対する意識が低かったのかもしれない。

日本企業のモノ作り文化自体を否定するつもりは無いが、おそらくここで多くの人の頭に浮かぶであろう日本の「IT企業」というのはなんだろうか。
ソニーパナソニックNEC富士通、日立、東芝、シャープといった総合電機関連ではないだろうか。
細かく言えばそれぞれが違う分野なのだが、大半の人は区別が付かないだろう。
やや詳しいであろう人でも、テレビを作っていれば電機関連、パソコンや携帯電話を作っていれば情報関連、という2つのくくりに分けられるだけで、どっちにしても大型電器量販店ではおなじみのメーカーばかり。
そして、ここに日本企業がアップルに勝てない理由がある。いや、アップルだけではない。インテルにもマイクロソフトにもアマゾンにも負けているだろう。こういったアメリカの企業に日本企業がなぜ勝てないか。

印象でしか語れないが、理由はただ一つ。


「日本企業同士で同じ物作るから」


インテルがCPUをつくった。確かにモトローラもCPUをつくった。しかし、ほぼ同じ物を作ったわけではない。動作がかなり異なるものだ。しかし、世間はインテルをこぞって採用した。ここが大事。
あとになってAMDインテル互換CPUを作るようになったがこれはインテルがCPUの世界で圧倒的なシェアを占めた後であり、市場が十分育ってからAMDが参入したと考えたほうが良いだろう。

マイクロソフトも同じ。むしろIBMの方が先行していたかもしれない。しかし、世間はマイクロソフトをこぞって採用した。後は現在の通り。世界中の隅々にまでマイクロソフトのOSが行き渡っている。

一方、日本企業はどうか。

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 ただし、わが国企業は、昔から周回遅れになっていたわけではない。1980年代にソニーが作ったウォークマンは、「世界の文化を変えた」と言われ、市場を席巻した。それ以前にも、トランジスターラヂオなどの画期的製品を生んできた。

ソニーウォークマンを作った。ここで他社はそっくりなウォークマンもどきを作った。松下も東芝もみんな作った。

日本企業の話をすると必ずウォークマンの栄光の歴史を語るが、これはカセットテープという財産がたまたますでに揃っていたから助かったのだ。ここまでは良かった。
今度は過去の財産が無いビデオデッキ。ビクターがVHS方式を、ソニーがベータ方式を作った。世間がVHSを採用することで事実上の標準になった。むしろこっちの成功例を語れば良いのになぜかそうはならない。
旧世代の音楽プレーヤー、ウォークマンと新世代の音楽プレーヤー、iPodを比較したいからなのだろうが、ウォークマンカセットデッキという新市場を創造したわけではないことを忘れてはいないだろうか。
そして今度はDVDレコーダー。-R/RW陣営と+R/RW陣営に分かれてしまいこう着状態。レコーダーが普及する前に技術がどんどん陳腐化してしまった。さらにブルーレイ。HD-DVD陣営と分かれてしまい、またもやこう着状態。一つにまとまらないまままたもや陳腐化。
(まぁ、これらはコピープロテクト関連の問題が大きく、DVDはこのはずし方?が分かるようになって一気に普及した、という側面も大きいとは思うが)
日本企業は似たり寄ったりなものをお互いにぶつけ合ってもたもたしている間にインターネットで動画を視聴する時代になってしまった。

アメリカ企業のように、誰かが新しいものを作ったら、他の企業はそれに乗っかる、という動きを出来ないものなのだろうか。

実はアメリカ企業のような動きをして成功した日本企業がある。任天堂だ。
任天堂ファミコンを作る。他の会社は同様のゲーム機を作るのではなく、ファミコンに乗っかり、ソフトで一儲けしようと考えた。
結果としてゲーム機市場という巨大なものが出来上がり、たくさんの企業が幸せになった。

iPodもそうだ。アップルがぱっと出して一気に市場を席巻する。マイクロソフトソニーが後追いしたがぱっとしない。
レコード業界が古いしがらみに縛られず、さっさとiTSに移行して儲けようと考えた。
結果としてデジタル音楽プレーヤー市場という巨大なものが出来上がった。

では、なぜアップルだから出来たのか。
まぁ、アップルという企業風土やそれが持つブランドイメージなどなどいろいろあるだろう。
その辺の分析はほかの人に任せたいと思う。

私はこう考える。

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 かつて、「アップル社と言えばPC」というイメージが強かった。しかも当時のPC市場では、IBMなどの有力メーカーが高いシェアを持っており、アップルはどちらかというと独自の路線を歩む、いわばニッチ的な存在と見られていたのではないだろうか。

「アップルは孤高でもやめない」

というのがアップルの強さなのではないだろうか。

パソコンの市場シェア数パーセント程度の企業がずっとしぶとく続けてきた。決してやめなかった。
DOSの時代でもGUIを押し続け、Windowsの時代になってもマスクのボタンは1つ、というのを貫いた。
少数ではあるが支えてくれた人を裏切らなかった。お金はかかるけど、同じものを使い続けられるという安心感があるのではないだろうか。

DVDやブルーレイの普及が遅かったのはこの裏返しである。
非主流派の規格をつかまされたらすぐにゴミになる。そんなのは嫌だ、という思い。
アップルはパソコンの世界ではずっと非主流派であった。当然ソフトの流通量も少ないし、機器も高い。でも、やめなかった。

iPodiPadも「どのぐらい使い続けられるのだろうか」という疑問符と「このぐらいの値段なら数年使えればいいや」というコストパフォーマンスのバランスが取れているからこそ支持されたのだろう。
その上で「消費者がやりたかったこと」をきっちりと実現してくれている。そのために業界のしがらみを気にしない。これが大事だ。


日本企業はライバル社と同じような製品を売るな。違うアプローチで攻めろ。そして、他の業界に気を使うな。
日本企業だって、アメリカ企業の製品にはすぐに乗ってるじゃないか。
国内企業同士だからといってすぐに対抗馬を出すという愚はやめたほうがいい。