必要なのは労働者が自ら進んで辞めたくなる環境

雇用流動化へ「40歳定年を」 政府が長期ビジョン

http://www.nikkei.com/article/DGXNZO43478440X00C12A7EA2000/
改革案の柱は雇用分野だ。60歳定年制では企業内に人材が固定化し、産業の新陳代謝を阻害していると指摘。労使が合意すれば、管理職に変わる人が増える40歳での定年制もできる柔軟な雇用ルールを求めた。

これではまるで企業にしがみついている労働者が邪魔なのに、制度的に首が切れないから産業の新陳代謝を阻害していると言わんばかりだ。労働者が企業にしがみついているのは、雇用の椅子そのもの不足しているからだし、今座っている椅子より待遇の良い椅子がないという、労働者側に降りかかる問題なのだ。それなのに、産業の新陳代謝を進めたいから労働者の首を切りやすくしましょうと、企業側の問題にすりかえてしまっているのだ。

早期定年を選んだ企業には退職者への定年後1〜2年間の所得補償を義務付ける。社員の再教育の支援制度も作る。雇用契約は原則、有期とし、正社員と非正規の区分もなくす。

もう、ここで本当の目的が見えている。「産業の新陳代謝」なんてどうでもいいのだ。本音は「正社員と非正規の区分をなくしたい」のだ。
企業側の問題として扱おうとしている問題なのに「正社員と非正規の区分をなくしたい」なんて言ったら、目標はただ一つ。「全員非正規扱いにしたい」になる事は火を見るより明らかである。

将来の理想は付加価値の高い産業が立地する「共創の国」とした。時間や場所を選んで働けるようになれば仕事と育児を両立できる人が増え、出生率は改善すると見込んでいる。

ないない(笑)
車が売れない、住宅が売れない、出生率が上がらないと嘆いている世の偉い方々。
手元にキャッシュがない人は車をローンで買うでしょう。住宅をキャッシュで買う人は少ないでしょう。大抵の人はローンを組む事になる。子どもが生まれたら20年ぐらいは育て続けなければならない。それなのに「40歳での定年制」なんてやったらどうなるか。大卒の社会人1年生は22歳。わずか18年後には首を切られる恐れを抱くようになる。もちろん22歳で結婚している人や子どもを育てている人は少数であろうし、住宅を購入済の人も少数であろう。住宅購入や子育てはもっと先。30歳位になっているとすれば、猶予は10年しかない。と、なれば、子育てや住宅購入はもはやリスク以外の何者でもなくなってしまう。
つまり、仕事と育児の両立どころか、仕事も育児も「どうも無理っぽい」と20代のうちから諦めるようになってしまう人が続出する事になるだろう。

必要なのは雇用の椅子を増やすこと。椅子を増やせば待遇のよさで椅子を選ぶようになり、企業が首を切らずとも労働者は自ら安心して仕事を辞め、次の仕事場に向かい、新陳代謝が進むはずである。

大企業は居心地がいいからやめる人が少ないが、中小企業は人の出入りが激しい。つまり、雇用が流動化しているのだ。
で、現実はどうか。
雇用の流動化が進んでいる中小企業は生産性が高くなっているのか?時間や場所を選んで働けるようになっているのか?仕事と育児を両立できる人が増えているのか?
答えは断じて否である。