「経費」という名の「他人のお金」を使って“似非”個人消費を増やそう。

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賃上げをすれば所得が増えるから個人消費が伸びる、という理屈だったはずなのに、現実はそうはならなかった。
だから、

子育て世帯の教育費負担や、消費者の節約志向などを一例に挙げ、「これらの点に何ら手をつけないままでは、経済界が賃金引上げに取り組んでも消費は拡大しない。こうした課題に官民あげて取り組むことが必要」

というコメントが出たんだろうけど、見逃しているポイントがもう一つあると思う。それは企業が使う「必要経費」だ。
わかりやすいところが「接待費」「出張費」「宿泊費」だろう。
かつては結構な額が接待費として認められたり、充分な額の出張費や宿泊費が支給されていた。しかし今は接待費はぎゅうぎゅうに絞られ、出張費や宿泊費は実費のみという企業が多くなっている。つまり、常日頃から「無駄を省け」「余計なコストはびた一文払わない」という会社環境で仕事をしている人が多いということだ。下手すると「経営者目線で仕事しろ」なんて馬鹿げた話がまかり通る会社もある。
そういう会社で働いている従業員が、自分の家の家計がちょっとばかり賃金アップしたからといってホイホイ消費を増やすだろうか。どうせ賃金アップなんて一時的なものだ、将来また厳しくなれば真っ先に賃金抑制したり、首切りをするはずだ、と思っている従業員が大半であろう。つまり、賃上げしてもそう簡単には消費アップにつながらないのだ。
だったらどうすればよいか。
企業の経費で“疑似”個人消費を増やせばいいのだ。
まずは接待費を大幅に緩和し、週に一回ぐらいは会社のお金で飲み食いできるようにする。もちろん全員ではないけど、営業職ならそういうお金の使い方をして販路の拡大やお得意さんを楽しませればいい。必然的に接待を受ける人も増え、お礼に逆接待をしたり、会社のお金でしか行ったことのない店に個人で行く人も出てくるかもしれない。
次に、出張費や宿泊費を昔のようにゆとりある定額制にする。長期移動する人や長期派遣でホテル暮らしのような出張続きの人は給料に手を付けることなく生活が出来るぐらいでよい。程よい事実上の“あぶく銭”になるし、給料に手を付けるわけではないのでお金を使うことに対するハードルが下がり安心して使うことが出来る。
自分の懐から出ていくお金だと思うから企業は賃金を抑制し経費を削減する。
自分の懐から出ていくお金だと思うから個人は消費を抑制し無駄を削減する。
でも、使って良いお金が「他人のお金」で自分の懐が痛まないお金だったらどうだろうか。きっともっと軽い気持ちで消費できるはずだ。「タダで食べる夕飯はうまい」とか「おごってもらったランチは美味しい」とか「会社の金で飲むお酒は美味い」という経験は誰しもが持っているはずだ。お金を使うことに嫌悪感や罪悪感を感じやすい不景気続きの日本では、賃上げよりも、その賃上げ分を「他人のお金」として使えるようにしたほうが良いのかもしれない。