今さら止められない! 水面下で増える「成果主義」の形骸化

http://diamond.jp/series/analysis/10021/

「おれの目はフシ穴じゃないぞ。君の仕事の仕方は認めない」

 社員の評価を成果主義で行なっているある中堅IT企業の社長は、声を荒げた。説教されたのは、協調性がなく仕事も不真面目という、評判の「フダ付き社員」だ。しかしこの社員、今期は予想以上に奮闘し、同僚を上回る評価を初めてもらった。ところが、人事部にそれを聞いた途端、社長が顔色を変えてその社員を呼びつけたというのだ。

「結局、成果主義を導入した社長自身が、制度を信頼していないために起きた事態」と語るのは、同社の人事担当者。仕事の過程ではなく結果だけで社員を評価する成果主義では、経営者や人事部が目をかけている社員が必ずしも高い評価を得るわけではない。もし意外な社員が高い評価を得ると、制度の運営者側が不安を覚えて、取り乱してしまうのだ。

 結局この社員、高い評価を得たにもかかわらず、社長に怒られたあげく減給されてしまったというから、無茶苦茶である。一部始終を目撃した人事担当者は、「こんな制度をいつまで続けなければいけないのか」と頭を抱えた。中で働く社員は「気の毒」としか言いようがない。

そもそも論として、積極的な意味で成果主義を取り入れた会社なんてほとんどないのでは?

この制度を取り入れたそもそもの目的は「賃金の総枠抑制」だったはず。まぁ、それを公言する会社はないと思うが、これを導入したときはみんなそういう雰囲気だった。とにもかくにも「人件費を減らしたい」「そのための手段は問わない」「できれば自動的にどんどん下がる」手段と言うか名目が欲しかっただけ。

「医者が多いから」ではなく「医療費抑制のため」に医者を機械的に減らしてきた国とやってることは本質的に同じ。
あとになっていかにそれらしい理由を探してもダメ。まぁ、国の方が先に医者減らしは失敗だったとようやく認めたあたりはまだ救いだったかもしれない。
が、企業は違う。自ら決めた成果主義により「成果主義の成果は出なかった」と判断できない、したくない。

だから、

「なぜ水面下か」と言えば、成果主義の運用実態が外部から見えずらいため。失敗を認めると企業イメージに傷がつくので、労働機関やマスコミのアンケートには、ほとんどの企業が「成果主義をきちんと運営している」と回答するのが常だ。このようなトレンドが最近ますます強まっているため、実態は関係者にしかわからないのである。

責任を取りたくない、成果主義の名のもとに「悪いのは社員だ、だからお前らを処分する」って言いたかっただけ。(本当に「働かない社員が悪い」と言ってしまった富士通の例もあることだし)
しかも自分は絶対安全件の高みに立ちながら。それで人件費が減って業績が上がり、評価が上がり、成果主義による評価で役員などは己の評価が上がるはずだった。

が、そうはならなかった。手段と目的が違ったんだから、当然の結果。
あの時ガマンして年功制度のまま踏みとどまった会社の社員の方が精神衛生的にはよかったのではないだろうか。