企業には「10年清算制」を

国家戦略会議の「40歳定年制」に賛否両論 安易な大胆リストラ助長も

http://www.sankeibiz.jp/econome/news/120802/ecd1208020500000-n1.htm
報告書も「現在の60歳定年制は企業に人材が固定し、新陳代謝を阻害している」と指摘する。定年後、新たな知識を得たうえで同じ企業で働くケースもあれば、経験を生かして起業したり、民間非営利法人(NPO)に関わることなどを想定しており、「イノベーションが必要な産業を受け皿にすべき」(新浪社長)との声は強い。

「企業に人材が固定し、新陳代謝を阻害している」と言うのだったら、経営側が労働側を切り捨てる制度だけ導入するのは不公平だろう。切り捨てる側の経営側も40歳になったら退くべきだ。もっとも、40歳で経営側になると言っても「名ばかり管理職」の課長職が圧倒的に多いだろうから、不公平だと言ったところで経営側はあまり痛くないだろう。
正社員が持つ「60歳定年制」を「既得権」「新陳代謝を阻害する」と言うのであれば、社員を切り捨てる側にも新陳代謝を進めるために貢献をしてもらわなければなるまい。
「同じ企業で」といってるが、それでは新陳代謝にはならない。単に賃下げのための口実である。高級官僚の天下り禁止を唱えている人に対して「経験を生かせる企業に天下りするのは当然である」と返答する人と同じ理屈だ。本気で新陳代謝を進めるのであれば新たな就職先は「起業」「NPO」だろう。しかし、起業がいかに難しいものであるかはいまさら語るまでもあるまい。
イノベーションが必要な産業を受け皿にすべき」と言ったところで「じゃお前が起業してみろ」といわれるのがオチである。
「起業しやすくするにはどうすれば良いか」と言う話は「人材の新陳代謝を促すにはどうすればよいか」という話と同じである。
「人材の新陳代謝を促すには、クビを切りやすくすれば良い」と経営側はいつも言っている。ならば、答えは一つ。
「起業しやすくするには、廃業しやすくすれば良い」ということだ。
儲かっている起業だろうがなんだろうが、廃業してもそれが有望な市場なら開いた穴を埋める企業が必ず現れるはずだ。
人材の流動化を高めれば雇用が改善し、賃金が上がるだろう、なんて言ってる有能な経営者は快く廃業に応じてくれるだろう。新しく興す会社は必ずや企業体質がよくなり利益がアップするはずなのだから。
じゃあ、いつになったら廃業すればよいか。
最近は企業の寿命が短くなり「企業10年説」なんて言われるようになって来ている。実際はもうちょっと長いだろうが、美味しいところを残すと言う意味では10年で一区切りつけるのが良いタイミングだろう。10年で会社を強制的に清算。利益があれば株主だけでなく従業員にも山分けすべきだろう。それを元手に起業するのも良いだろうが、普通に考えればそんな馬鹿な事はしないだろう。清算して他人の手に渡るぐらいなら、その前に使っちゃえ、と考えるのが企業と言うものだ。内部留保をたんまりと抱えさせることなく強制的に他のところに投資をせざるを得なくなる流れができるだろう。そうなれば起業ごと新陳代謝が発生し、時代にあった企業が成長し、消えるべき企業は10年で消え去る事になる。
正社員に40歳定年制を望むなら、企業も新陳代謝のために10年で強制的に消え去る覚悟を持って欲しいものだ。